(竹内三保子/ニューワークタイムズ編集長・カデナクリエイト代表)
ブラック、パワハラ、詐欺まがい…。経歴にどんどん傷が付く
独立の失敗、フリーの限界…。半年後に、再び、就職活動を始めた高橋さんは、新聞広告で見つけた中堅の出版社に何とか入社した。
高橋:洒落た男性誌で有名な会社だったのですが、実際に入ってみると、どうも経営がおかしい。雑誌の知名度を利用して、読者に怪しい投資話をもちかけているみたいなんですよね。もちろん、社員には隠していましたが、何となく雰囲気で分かるし、ネットに悪口も書かれてました。雑誌をつくること自体が犯罪の片棒をかつぐような気がしたので、1年もたたずに辞めました。結局、数年後には、その会社は大きな負債を抱えて倒産しました。
――苦難が続きますね。それで、次はどうしたんですか?
高橋:そのあとはいわゆるスピリチュアル系の出版社に入りました。まあインドに長いこといたくらいなので、自身にもそういう素養があったわけですが、ここも残念ながら問題がある会社で、やはり長いこと在籍せずに退社。次は興味もそこそこにあった医療・介護系の出版社に入りましたが、今度は社長のパワハラで社員が半年で半分入れ替わるような劣悪な会社…。もっとも、出してる本や雑誌はすごくよかったし、医者や介護士の方たちに話を聞くのは勉強になって、地域医療、病院、地方の高齢化問題など、これまで見えなかったものがはっきり見え、社会に対する見方が大きく変わり、人間的に成長できたと思いました。仕事には未練たっぷりでしたが、思い切ってやめました。すでに7社目。経歴はもうボロボロです(笑)。
全てのキャリアが結びつく時
もっとも、高橋さんの経歴は本人が言うほど悪くはなかった。会社が変わる度に、新しいノウハウや知識を身につけていたからだ。編集、写真、印刷…。そこに医療、介護の知識が加わっていた。人材紹介会社に依頼すると、すぐにナナ・コーポレート・コミュニケーションズを紹介された。
――実際に面接を受けてどうでしたか?
高橋:まず、きちんとした会社だと当たり前のことに感動しました(笑)。そして、ここなら、自分のキャリアを活かせると思いました。社内報の制作は、クライアント企業さんごとにやり方が違うし、担当者は異動などによって定期的に変わります。ですから、どんなやり方のクライアント企業さんとも、新しい担当者とも、あたかも数年来チームを組んできたようにスムーズに仕事を進められる能力が問われますが、それに関しては、海外放浪と会社遍歴で十分に養われた(笑)。引け目に感じてた経歴が、プラスに感じられるようになりました。もちろん、会社遍歴をする中で、編集だけではなく、写真撮影、原稿執筆も自分でできるようになっていました。しかも、仕事の目的は、クライアント企業の組織を良くすること。実体験から、組織のあり方、企業の社会的責任、社内のモラルなど「組織」に対してじっくり勉強してみたいと思っていたところでした。どこから切り取っても、まさに、自分のためにあるような仕事だと思いました。
――実際に仕事を始めるといかがでしたか?
高橋:何よりも気持ちがよかったのは、仕事でお会いする方が、みな、本気で自分の会社を少しでもよくしようという熱意に溢れていたことですね。たとえば合併を体験した会社では「社内に一体感をもたせるためには、どうすればよいのか」、技術系の会社なら、「新技術をどんどん発明するような環境をつくるためにはどうすればよいのか」といったことを真剣に考えている。だから、僕も、少しでも、この人たちのために役立ちたいと一生懸命になる。読者もはっきりしてますから、反応もダイレクトに伝わってきます。
――社内報と一般誌のやりがいの違いはどこですか?
高橋:クライアント企業のために役立てたという実感をはっきりと得られることですね。「社内のコミュニケーションがよくなった」「理念が社内に浸透した」「制度の利用者が増えた」といった声をきくと、本当に社内報制作にかかわってよかったと思います。それは、雑誌や書籍を発行して、何万部売れたからいくら儲かったというのとは全く違う喜びです。この会社に来て、まだ2年ですが、やっと自分の居場所がみつかったという感じですね。
――ありがとうございました。業界に旋風を巻き起こすような社内報が誕生することを期待しています。
編集者になりたい人へ
■高橋健さんからワンポイントアドバイス
オーソドックスなやり方は、いうまでもなく出版社に入ることですが、出版社は狭き門にもほどがありますよね。でも、紙媒体にこだわらなければ、実は、webでも、広告でも、営業でも編集的な仕事って、世の中には沢山あります。重要なのは、編集の本質を理解すること。それが分かって自分を磨けば、紙媒体の編集もできるんですよね。とくに広報誌の担当者を見ているとそれを確信できます。編集の経験など全くなくても、他部門で一流の仕事をしてきた方は、ちょっと編集の勉強をしただけで、プロの編集者顔負けの編集能力を発揮しますからね。
■高橋さんにとって仕事とは?
「自分にとってのミッション。あるがままに生きていれば、自分という個性にあった仕事が自然に表れると考えています。ですから、目の前の仕事を一生懸命になる。そうするうちに、また、次のミッションが現れてくる。そんな風にやってるうちに、現在の仕事にたどりついた。仕事を面白くするコツは、面白いと思うこと(笑)。たとえば、ミャンマーの小さな村が面白いから、是非、行ってみろと言われた時に、「それは面白そうだ」と思えたら、その瞬間に勝ったも同然。行かねばならぬと義務的に考えれば、つまらなくなります。でも、北極で毛布一枚で一晩過ごせというような絶対的に辛いことは、無理しないで逃げていいと思います」
(おわり)
引き続きパキスタン問題に取り組んでいます。午後はパキスタンのクレーシー外相とミーティングをし、夕方は国連で演説。すでに拠出を決めた70億円に加えて、さらに50億円の追加融資を表明しました。う~~ん。スゴイ!ちなみに、日本は12億円の支援…。そして、次なるビッグな仕事は、イスラエルとパレスチナの直接交渉再開の発表!どんな感動的な表現で発表するのか楽しみですね。