カテゴリー別アーカイブ: この本、やってみました。

『ビジネスパーソンの誘う技術』をやってみた。

ビジネスパーソンの誘う技術

<今回のやってみた本>
『ビジネスパーソンの誘う技術』(ベリッシモ・フランチェスコ/著 ダイヤモンド社)

<今回のやってみた人>
箱田高樹

パスを出さないイタリア人の本。

タイトルに、誘われてしまった。

著者はローマ生まれのイタリア人、ベリッシモ・フランチェスコ氏。

テレビや雑誌で活躍する売れっ子イタリア料理研究家でナンパなチャラい外国人として有名だが、実は個人的な友人でもある。

ベリッシモは僕が監督を努めるフットサルチームのチームメイトで、エースナンバーの10番を背負っているのだ。

その責務からか性格からか、試合にはいつも前のめりでのぞみ「俺が俺が…」とゴールを狙う。それでいて、どう考えて入らない角度からでもシュートを打ち込み、やはり外してしまうという、実に気持ちのいいイタリア男である。

本出す前に、パスを出せ。

とも思ったが、今回そんな彼が出した著作が、これまでのようなレシピ本ではなく『ビジネスパーソンの誘う技術』という名のビジネス書ということで、思わず手が出てしまった。

「これは信用できる」。
そう思ったからだ。

なにせベリッシモは、先に述べたように、女性とみればみさかいなく声をかけ、誘いまくる生粋のナンパ師。
それより何より、実は彼が、そんな「誘う」テクニックと行動力を駆使して、まさに現在の人気を手にしたことを知っているからである。

「どうすれば日本で有名になれるか」「テレビや雑誌に出られるか」「料理研究家として人気が出るか」――。

出会った頃はまだ学生だった気がするが、ベリッシモはよくそんなことをフットサル後の打ち上げの場で口にしていた。

そして事務所などに属さず、とにかく制作会社や出版社に売り込んでいたのである。コネもないし、マネージャーもいないから、とにかく自ら電話でアポをとって営業。「こんな企画どうですか」「僕はこんなことができますよ」と、地道に誘いまくる手法をとってきたのだ。

でもって気がつけば、たまに女性誌の料理コーナーや、外国人がひな壇に座るテレビのバラエティ番組などで顔を見かけるようになり、いつの間にやら「ベリッシモだ!」などと試合中に相手チームから声をかけられるようになっていた。

こうしてベリッシモは自分を上手に売り込んで、今の地位を自ら得た。
誘うことで、人生を切り開いたわけだ。
相変わらず、パスは出さないけれど。

そんなわけだから、彼が書いた『誘う技術』のノウハウ。オンにもオフにも使える戦略と実行力をぜひ学びたい。そう思った次第である。

みんな誘われるのを持っている。

というわけで、本書を開く。
ベリッシモならではの、女性を誘うときに試したいテクニックや心構えがズラリと並ぶ。

「なぜ、自分を誘ったのか、その理由がはっきりしたほうがいい。誘われた側もOKしやすいからです」
「誘うときは相手がどういう人かを考えて、どういうメリットを提示できるかを考えましょう」
「会話では過去の話をするな。未来の話をしましょう。これから何かが起きそうな場所に人は惹かれる、僕の誘いに乗るといいことがあるよという話をすべき」
といった具合だ。

そして彼は続ける。
「実はこうして誘うことが“相手を知る“ことになる。結果、チャンスが生まれることになる」

なるほど。
これはビジネスにおいてでも一緒だ。
商品の売り込みや企画の提案は、最初は断られることが多いけど、しっかりとプレゼンをすればフィードバックがある。「ここがダメ」「それはいらない」「こうなればいい」。それはすなわち相手のニーズやウォンツにほかならない。そこで得た意見を踏まえてカイゼンすれば、少なくとも次は前よりは相手の気持ちをおもんぱかった提案ができるはずだ。成功確率があがるというわけだ。

実際、ベリッシモはこうしてマスコミ関係者にアポをとったあと、彼らの言葉を踏まえて自分を見直し、キャラづけや企画内容を変えて、何度も何度も「誘った」のだという。
えらいなあ。

とまあ、こんな風に、単にナンパの指南書なのではなく、仕事に活かせる思考やノウハウを随時挟み込んでくるのがおもしろい。

また文中に
『凧を持っているなら、まず走れ』(風を待つよりも、自分が走らないと始まらない。つまりしのごの考えてないでまず誘え、ということ)
『肉でも、魚でもない』(食事のメインディッシュは肉か魚かのどちらか。そのどちらでもない中途半端な人間は食べてもらえない。自分のキャラをしっかりと持て!)
などと、イタリアのことわざをちょいちょい挟み込んでくるのも新鮮だ。

もっとも、本書で僕の心に一番響いたのは、この辺りだった。以下抜粋。

誘うタイミングは「早ければ早いほうがいい」。スケジュールをおさえるにはそれが一番だからです。仕事にしろ、デートにしろ、先にオファーしたほうが優先されるのは、当たり前のことです。後回しにするとだいたい状況は悪くなる。「忙しいのではないか?」「機嫌が悪いんじゃないか?。そんな勝手な妄想が膨らむからです。

確かにそうだ。アポ取りなんかまさにこれ。タイミングを見計らって…なんて考えているうちに、相手の予定は埋まりがち。断られるにしても早いほうがいいから、とにかくあたるのが鉄則。なのに、プライベートだとあれこれ考えて、奥手になるのはなぜだろう。ああ、納期が無いからかもな。
いずれにしても、誘いたかったら「すぐ誘う」のが鉄則かつ成功率が高いわけだ。

加えて、あとがきのココも響いた。以下抜粋。

…お伝えしたいこと。それは『みんな誘われるのを待っている』ということです。人は誰かに声をかけられたり、誘われたりすることに喜びを感じます。必要とされるのは誰でもうれしいことだからです。

そうなんだよね。なんか「誘ったら嫌がられるんじゃないか」とか思いがちだけど、裏っ返せば、自分は誰かに誘われたい、とは思っていたりする。ようするに、「誘ったらうれしいと思ってくれる人は多い」ということにほかならないのだ。
もちろん、断られたり、嫌がられたりということもあるだろうけど、改めてそう気付かされた。ベリッシモありがとう。誘う勇気をもらえたよ。

というわけで、イタリアの種馬から学んだ術を試すべく、難攻不落の相手を誘ってみることにした。相手? もちろん女性である。むふふ。

子持ち女性を、食事に誘ってみた。

『誘う技術』で学んだ通り、思いついたら「すぐ誘う」ことにした。
そして「理由づけ」や「相手のニーズを汲んだ提案」もしっかり添える。
「紳士的に誘う」ことも忘れずに、だ。

早速、自宅のリビングで、1歳半の次男坊に食事をあげる、そのターゲットに声をかけた。

「おはよう。そういえば(←すぐ誘ってみた)、取り引き先にきいたんだけど、代々木上原あたりにいい感じのカフェがあるんだって。ランチがすごく美味いんだって(←理由づけしてみた)。どうよ、あえて出かけて食事でも。『たまには気分転換したい』って言ってたしさ(←ニーズをくんでみた)。子供たちを連れて行ってもいいし、お母さんにみてもらって、夫婦ふたりでもいいし…」

唐突のお誘いに、妻は一瞬戸惑っているようだった。
そうだろう。そうだろう。
何せこちとらイタリア仕込みである。
紳士的に、笑顔かつ優しい声色で誘ってみたしね。

2秒後、妻が口を開いた。
「うーん…パス。行くなら友だちと子供たちと行くわ」

ここでパスきた!(しかもキラーパス)。

ベリッシモくん。ありがとう。
聞くところ所によると、イタリアは家族の絆が強いらしいじゃないですか。
今度は『イタリア流、夫婦仲をよくする技術』みたいな本、書いてくれ。

ビジネスパーソンの誘う技術


『超・オフィス整理術 仕事ができる人はなぜデスクがきれいなのか』をやってみた。

超・オフィス整理術 仕事ができる人はなぜデスクがきれいなのか編集部のメンバーが最近読んだ“シゴトに関する書籍”を自ら実践。その「はたらき心地」をレポートするという、安易なプラグマティズムにもとづいた書評コーナーなのです。
<今回のやってみた本>
『超・オフィス整理術 仕事ができる人はなぜデスクがきれいなのか』(小松 易/著 マガジンハウス)
<今回のやってみた人>
須貝

今回はデスクの片付けに挑戦。

「けっこう机、きたないよね」
と、先日会社の先輩に言われた。私自身、密かに気にしていたことだったので、「思い切ってデスクを片付けよう!」と決心。某誌の書評の仕事で出会った本を実践してみることにした。タイトルは『仕事ができる人はなぜデスクがきれいなのか』。日本初の片付け士・小松易さんによるデスクの片付けのノウハウが詰まった一冊だ。著者によれば「机がキレイな人は頭の中もきれいに整理されていて、仕事もできる」ということらしい。確かに自分の周りを見渡してみると、そんな気がする。
で、私の机はこんなかんじだ。
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かなりきたない。そしてなぜか小銭が散らかっている。こんな状態をいったいどうすればよいのか。本書によればそもそも片付けは「整理」と「整頓」の2つから成り立っているという。そして、整理は「物を減らすこと」、整頓とは「物を使いやすい場所に置くこと」。つまり片付けとは、物を減らして使いやすく配置することなのだ。
著者によればデスクの片付けの理想は「机の上にパソコンと電話のみ」。軽くやりすぎ感が漂うが、黙って実践しよう。本書は片付けの手順が非常に具体的に記してあるので、書かれた通りに実践すれば整理整頓ができるようになっている。
はじめは引き出しの整理から。
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あらためて冷静に見ると相当きたない。
これをどうするかというと、中身を「全部外に出す」!
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外に出す作業、完了。
中身を全部外に出す理由は2つあって、「すべてのものが見渡せるので効率が上がる」のと「減らす覚悟ができる」のだそうだ。確かに早く減らしてしまいたい。
次に「要」「不要」に分けて、不要としたものを減らす。
普段使っていない余分なボールペン、「不要」。
全く使っていない液体のり、「不要」。
数カ月前に終わった秋葉原ホビーまつりの抽選券、「不要」。
こんな地道な作業を続けた結果……。
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ほぼすべての物が「不要」だったという衝撃的事実が判明した。
よく使うペン2~3本や電卓といった限られたアイテムだけが残った。
同じ要領でデスクまわりをすべて整理整頓!
デスクの棚に眠っていた1年以上前の書類や雑誌のバックナンバーといった不要な物を大幅に削減。さらにパソコンの本体はデスクの下へ移動。よく使う書類もすべて右下の引き出しの中に収納した。
そして最終的に……。
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目標としていた「机の上にパソコンと電話のみ」が実現した。一瞬、「今日で退職する人のデスク」に見えなくもないが、非常にスッキリしていて良いと思う。ついでに自宅であまっていたパソコンのモニターを持ってきてデュアルモニターにしてみた。
さて、この状態になってからすでに1か月ほど経った。とにかくデスクが広いので、毎日非常に気持よく仕事ができている。原稿を書くときに、机に資料をたくさん広げて作業をしてもまったく邪魔にならない。
それと、何と言ってもモニターが2台になったことが大きい。PCでの作業効率が飛躍的に上がった。例えば右のサブモニターでブラウザを開きながらメインモニターで文章を打つ、メールソフトをサブモニターに映したままメインモニターで他の作業をする、なんてことができてとても快適だ。
……と、いつのまにかデュアルモニター環境を勧めてばかりいたが、それもこれも机の上をキレイに片付けたからこそできた話。ぜひ、デスクの片付けにチャレンジして成功した暁にはモニターを2台にしてほしい。きっと、今より「仕事ができる人」になるはずだ。

超・オフィス整理術 仕事ができる人はなぜデスクがきれいなのか

超・オフィス整理術 仕事ができる人はなぜデスクがきれいなのか

  • 作者: 小松 易
  • 出版社/メーカー: マガジンハウス
  • 発売日: 2010/06/24
  • メディア: 単行本




『頭のいい人のからだの鍛え方』をやってみた。結果編

頭のいい人のからだの鍛え方 筋肉で痩せる・体質改善する8メソッド編集部のメンバーが最近読んだ“シゴトに関する書籍”を自ら実践。その「はたらき心地」をレポートするという、安易なプラグマティズムにもとづいた書評コーナーなのです。
<今回のやってみた本>
『頭のいい人のからだの鍛え方』(中野ジェームズ修一/著 ポプラ社)
<今回のやってみた人>
須貝

トレーニング開始から2か月。その効果は…

「コレステロールを減らしたいっ!」
 27歳とは思えない切実な願いを胸に、『頭のいい人のからだの鍛え方』というトレーニング本を試し始めてからはや2か月。「○○だけやれば大丈夫」「2週間ですぐ痩せる」といった甘い言葉で興味をひきつつ、実際やってみてもあまり効果がない――。本書はそんな内容とは一線を画す、ほんとうに効率的で、結果のでるやり方だけを紹介する「頭の良い」トレーニング方法を紹介する本なのだ。
というわけで今回は、本書の内容を実際にやってみた結果を発表しようと思う。…のだが、その前に「こいつは2か月間ちゃんとトレーニングしていたのか?」という疑問もあると思うので、そのあたりの報告からしておこう。
自分でも意外なことにトレーニング自体はまだ続けている。スタート時の目標は、ランニングと各種筋トレを基本のメニューとして週3回やることだった。仕事が忙しいときはランニングが週1回になることもあったが、まったく走らないということはなかった。
これはやはり本書で紹介されていた、簡単なことから始めて徐々にトレーニングの負荷を上げていく「漸進性の原則」のおかげだろう。最初は家のまわりを30分歩くことから始め、いまでは家の周りを30分走っている。距離にして5キロあると最近知った。いきなり「5キロ走る」をメニューにしていたらここまで続かなかった気がするが、少しずつ体をならしていくことで無理なく習慣化できたのだと思う。これぞ頭のいい鍛え方。
同じことが筋トレにも当てはまる。こちらもほそぼそと続けていて、たとえば上腕二頭筋(いわゆる、ちからこぶの部分)のトレーニングでは3キロのダンベルからはじめて、いまでは7.5キロにまでアップした。
もっとも、体の見た目はまったくと言っていいほど変わっていない。毎日見ているから変化に気づかないだけなのかもしれないが、憧れていたブルース・リーにはびっくりするほど程遠い。たった2か月であのビッキビキの肉体になっても恐いけど…。
見た目はともかく、今回の目標は「2か月後に血液検査の結果(特に悪玉コレステロールの値)を基準値内にする」だ。ちなみに基準値は総コレステロールで140~199。前回は276でぶっちぎりの「×要受診」だった。「これはさすがにクリアしてるだろう」と思ってまた測定しにいったら、結果は「228」。まさかの基準値超えだ。前回よりも値が48下がったものの、判定としては「△要注意」。目標達成は……できなかった。ショック!
いや、待てよ。ここで総コレステロールが基準値になっていたらどうだろうか? 結果に安心しきってしまって、せっかく習慣化していたランニングも筋トレもさっさとやめていただろう。これはもっとトレーニングを続けて、ブルース・リーばりのビッキビキの腹筋を手に入れろということに違いない! 背筋も鍛えまくって背中に「鬼の顔」が浮き出るくらいに……と頭の悪そうな妄想をしつつ、もうしばらく『頭のいい人のからだの鍛え方』を続けてみようと思ったのであった。

頭のいい人のからだの鍛え方 筋肉で痩せる・体質改善する8メソッド

頭のいい人のからだの鍛え方 筋肉で痩せる・体質改善する8メソッド

  • 作者: 中野ジェームズ修一
  • 出版社/メーカー: ポプラ社
  • 発売日: 2010/03/13
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)




『頭のいい人のからだの鍛え方』をやってみた。

頭のいい人のからだの鍛え方 筋肉で痩せる・体質改善する8メソッド編集部のメンバーが最近読んだ“シゴトに関する書籍”を自ら実践。その「はたらき心地」をレポートするという、安易なプラグマティズムにもとづいた書評コーナーなのです。
<今回のやってみた本>
『頭のいい人のからだの鍛え方』(中野ジェームズ修一/著 ポプラ社)
<今回のやってみた人>
須貝

答えは「筋トレ」にあり

「悪玉コレステロールが多いですね。通常の1.5倍もある。粗食を心がけてください」
と、一ヶ月ほど前に健康診断で宣告を受けてしまった。確かに最近運動不足や食生活の乱れがたたって太り気味だなと感じてはいたのだが、ここまでヒドいことになっていたとは……。まだ27歳なのに!
そんなわけで、渋々と医師の言葉どおり肉や揚げ物などを控え、カロリーをとりすぎない食生活を始めた。だが、これでいいのか!? 食生活を改めることはもちろん大事だが、これじゃあまりにも”守り”の姿勢じゃないか! まだ20代なのに、あれも食べられないこれも食べられないでは生きる楽しみが減るというもの。もっと積極的に悪玉コレステロールに立ち向かう方法はないものか。
そんなときに某誌の書評の仕事で出会ったのが、『頭のいい人のからだの鍛え方』だ。
著者はクライアントの要望に応じて体をデザインするプロ、パーソナルトレーナーの中野ジェームズ修一氏。彼が理想の体をつくるために必要な「筋トレ」の原則を伝授する内容なのだが、「体のデザイン」以外に筋トレが持つ可能性に私はハッとした。

筋肉を鍛えると、他にもさまざまな「よい変化」を享受することができる。
 たとえば……、
太りにくい体になる――基礎代謝量(安静にしていても使われるエネルギーの量)が上がり、体脂肪が落ちやすい体になる。

これだ。食事を制限するのがイヤなら、筋肉をつけて脂肪が燃えやすい体にすれば良い。これこそ求めていた”攻め”の姿勢である。試してみない手はない。
本書の内容は、著者自身も言うように非常にオーソドックスだ。基本となるのは、「目標を決めて、いつ、どんなトレーニングをやるかを設定し、実行する」、それだけだ。加えて、効果を最大限にするためのノウハウや、継続するためのモチベーションの高め方、休養の取り方などを丁寧に解説する。章立てとしては「過負荷の原則」「漸進性の原則」「継続の原則」「個別性の原則」といった、筋トレに必要な8つのメソッド(原則)で構成されている。
そこには「○○だけやれば絶対大丈夫」「2週間で理想の体に」などという甘い言葉は一切ない。しかも効果が出始めるのは、個人差はあるがトレーニングをはじめてから2か月後からだという。だが、その誠実な姿勢がいい。これなら本当に効きそうな気がする。

『頭のいい人のからだの鍛え方』を実践!

まず、「個別性の原則」を参考にして自分にあった目標とトレーニングプログラムを立てるところから始めた。目標は「いつまでに」「何を」「どうしたいか」を明確にすることが肝要だ。「ブルース・リーばりの割れた腹筋を手に入れたい!」、「体脂肪率をカズと同じ7.5%にしたい」……。いろいろと実現したい夢はあるが、今回は真面目に「2か月後に血液検査の結果(特に悪玉コレステロールの値)を基準値内にする」ことを目標にした。
次に考えるのは、目標達成のためにどんなトレーニングをしていくか。バランスよく鍛えるべき、という「全面性の原則」によれば、大きな筋肉が集中している下半身から始めて、上半身、体幹の順番で全身を鍛えるのが良いらしい。そこで、週3回のランニングをこなしつつ、9階のオフィスまでエレベーターを使わずに階段を上ることにした。そして慣れてきたら徐々に上半身、体幹を鍛える筋トレを取り入れていく計画だ。
ただし、ここで忘れてはいけないのが「漸進性の原則」。本書によれば「効率よく筋肉を鍛えるためにも、またケガの防止のためにも、体に与える負荷はいきなりではなく、徐々に大きくしていかなければならない」とある。例えばランニングでは、いきなり走るのはNG。1か月はウォーキングを習慣にするのが良いそうだ。走れないのはやや物足りないものがあるが、ここはプロの言葉に従おう。
で、2週間ほど前から平日の仕事後と休日に30分ほどのウォーキングをスタートしてみた。と同時に、9階の事務所まで階段を使うことも始めた。正直、ウォーキングより階段のほうがしんどいものがある。さらに、いつまでもウォーキングではつまらないので、3日ほど前から大胸筋を鍛えるための腕立て伏せをトレーニングに取り入れ始めた。ここでも「漸進性の原則」にならって、最初は負荷の軽い膝をついての腕立て伏せからスタート。だが、これが予想以上にキツい! 10回×3セットをやっただけなのに、3日経ったいまでも筋肉痛が治らない。……って、ちょっと焦りすぎて「漸進性の原則」から外れてたかも。
はじめて間もないので当然だが、激しい筋肉痛以外は、何かが変わった実感はない。60日ほど経過しないと効果は現れてこないのだ。だが、早くその効果を実感してみたい! と心待ちにしている自分がいることにふと気がついた。この時点で成功するんじゃないかと思っているのだが、あまりにも気が早すぎるだろうか?
というわけで今回は「この本、やってみました」じゃなくて、まだ「この本、やっています」な状況だ。結果は2か月後に発表しようと思う。上手く効果が出たら、だが。
ついに出ました、結果編。

頭のいい人のからだの鍛え方 筋肉で痩せる・体質改善する8メソッド

頭のいい人のからだの鍛え方 筋肉で痩せる・体質改善する8メソッド

  • 作者: 中野ジェームズ修一
  • 出版社/メーカー: ポプラ社
  • 発売日: 2010/03/13
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)




『裏方ほどおいしい仕事はない!』をやってみた。(後編)

裏方ほどおいしい仕事はない!編集部のメンバーが最近読んだ“シゴトに関する書籍”を自ら実践。その「はたらき心地」をレポートするという、安易なプラグマティズムにもとづいた書評コーナーなのです。
<今回のやってみた本>
『裏方ほどおいしい仕事はない!』(野村恭彦/プレジデント社)
<今回のやってみた人>
箱田

「雪かき仕事」を実際にやってみた

地味で大変だから、誰しもやりたくない「雪かき仕事」。そんな“事務局”的な地味な仕事を黙々と遂行することが、オレオレ的なモチベーションがはびこる現代の組織では、むしろ目立つ。結果として権限がなくとも、人を動かし、組織を動かすことになる――。
野村恭彦氏の『裏方ほどおいしい仕事はない!』にインスパイアされ、さっそく雪かき仕事を実践することにした。本書によれば、「雪かき仕事はどこにでも転がっている」という。
例えば朝一番に職場についてホワイトボードをきれいに消して、マーカーが使えるかどうかを確認する。色の出ないものは捨てて、新しいものを並べる。
例えば会議があれば「議事録とります」とパソコンでメモをとり、会議が終わった後ですぐさま参加者全員に送信する。
例えば周囲の同僚に「何か手伝うことある?」と声をかけてまわり、あったなら手伝い、なければ「何かあったら言ってね」と伝える。
いかがだろう。どれをとっても「裏がアリそう」に見えるのは、僕が汚れちまっているからだろうか。「なにをたくらんでいるんだ?」なんていぶかしがられそうだ。しかし、それこそが雪かき仕事で、また巡り巡って大きなリターンが期待できるのだという。
「そんな悪いですよ。私もホワイトボードふきます!」「議事録サンキュー! 助かったよ。今度はオレがやるよ」「いやいや、むしろ今度は僕が手伝いますよ」。こんな風に「人のために動く」雪かき仕事が、実は「人を動かす」ことになる。
こうした雪かき仕事が多大なリターンに繋がる理由を、本書はパウロ・コウリーニョというブラジル人作家が示した『恩義の銀行』という考え方で裏付けている。人は自分の人生で誰かのために何かをしてあげることで、恩義の銀行へ貯金をしている。何かしてもらうときに、その貯金を下ろしている。実はこうした「助けられた恩義」のほうが、「金銭的な損得」よりもずっと人を動かす力がある、というわけだ。
考えてみれば、そうだ。相手が自分のために何かをしてくれたとき、チップでも払ってしまえば、それは「サービス」となり、気兼ねもなくなる。しかし、対価を求められないとなると「いやはや、何だか悪いですな!」という負い目が途端に芽生えるものだ。タダより高いものはない、なんて言葉もあるが、つまりはそんな無償の恩義こそ重く、価値が高いということかもしれない。なるほど、と納得したところで、僕が試してみた雪かき仕事はコレだ。
『オフィスのトイレ&床掃除』。
おお~。いかにも「雪かきズム」に溢れた作業といえないだろうか? 我がカデナクリエイトは、アルバイトスタッフを入れても総勢5~6名程度の小所帯。オフィスなんていってもマンションの一室を改装したに過ぎない。なもんで、放っておくと紙資料の断片やら、綿ボコリやら、髪の毛やらが錯乱し、実に気分が悪くなる。しかし、共有空間とは実にあいまいなもので、確かにみんなのものではあるが、自分だけのものじゃない。まさに雪かき仕事のフィールドである。だからして、結局普段は「バイトくん、やっておいてくれたまえ」とこんなときばかり権限を行使するのが定番なのだった。
ところが、最近はアルバイトスタッフが出勤しない日も多かったりする。自ずと掃除は滞る。当然、いろんな毛がつもる。結果、ぼんやりと不快な気分がオフィスに積もり、生産性も低くなっている、気がした。そこで毎朝、幾分早めに出社。と同時にトイレと床をささっと掃くことを自分に課した。最初は「面倒だ」「汚いな」と思った。が、どうだろう。実際にからだを動かしてしまうと、あら不思議。コレが意外に気持ちいいのだ。しかも自分でキレイにしてみると、汚すのが惜しくなるから、当たり前のように出社→掃除という流れが体にたたき込まれる。しかも社内の誰より早く出社して、密かに皆がいやがる雪かき仕事をしている、というストイックな自分に、何だかいとおしさすら感じてきた。
「オレっていい奴だな~」
もっとも、2週、3週、4週と、黙々と掃除してきた頃、思った。

裏方であることの葛藤――。

「もしや……誰もオレがいい奴だってことに気づいていないのでは!?」
誰もいない朝のオフィスでクイックルワイパーをかける。トイレの中に籠もっていそいそと便器をふく。キレイになったところで実に孤独なのである。思わず「ありゃ? 今日は何だかトイレがキレイじゃないかい!」「ややっ、そのテーブルの下、なぜかホコリひとつないねぇ!」などと、これみよがしに口走りたくなってきた。
しかし、ココが耐えどころだ。だって、それをやったら「オレオレ」な人と何も変わらないから。「あいつめんどくさい奴だなあ」と思われるだけだ。なんて、自問自答するうち、気づいた。考えてみたら、僕が気づいていなかっただけで、周囲も密かにすでに雪かき仕事をしてるんじゃないか? と。
「そういえばあいつは言わずともゴミ出ししてくれてるな」「ああ、あの人は密かに購買部的仕事してくてるじゃんか」「彼はあの仕事、言われずとも黙々とやってんなあ…」なんて具合に。振り返ると、同僚たちの“見えざる雪かきの手”を感じられるようになってきた。そして、そんな姿に気づくとまた、自分も雪かきしよう! と強く思う。おっと、これこそ、まさにこれぞ事務局力の効用ではないか。ぐるぐると巡り巡って、自分に戻る。雪かきすると、雪かかれる。雪かかれると、雪かきたくなる、みたいな。
ちなみに本書では、もっと具体的かつ効果的に事務局力を発揮できる「仕掛け」について書かれている。「鍋奉行ホワイトボード――会議のときはとにかくホワイトボードの前に立って、鍋奉行よろしく全員の満足を常に考えながらバランスよく全員の発言を促す」とか、「内職プレゼンテーション――会議の最後15分くらいは密かにテーブルから離れてサマリーチャートを作り、しれっと終了前に公開。その際に自分の意見をさりげなく誰かの意見として混ぜ込んでおく」とか。
それぞれ瞬時に劇的に組織を変える類の仕掛けではないが、だまされたと思って、実践してみてほしい。どんな形であれ、じわじわと雪かきの力を実感できるはずだ。
それにしても満足なのは、この記事を書いたおかげで「僕が密かにトイレ&床掃除をしている」ということをイヤミなく社内の人々に伝えられたことである(←だからダメ)。

裏方ほどおいしい仕事はない!

裏方ほどおいしい仕事はない!

  • 作者: 野村 恭彦
  • 出版社/メーカー: プレジデント社
  • 発売日: 2009/10/15
  • メディア: 単行本