編集部のメンバーが最近読んだ“シゴトに関する書籍”を自ら実践。その「はたらき心地」をレポートするという、安易なプラグマティズムにもとづいた書評コーナーなのです。
<今回のやってみた本>
『裏方ほどおいしい仕事はない!』(野村恭彦/プレジデント社)
<今回のやってみた人>
箱田
“事務局力”を発動してみた。
まず帯にある「事務局力」の言葉にそそられる。
事務局とはいうまでもなく「ある目的を遂行するために期間限定で集まった組織の運営を取り仕切る機関」のこと。
だからその仕事は、たいがいメンバーのスケジュール管理やら、会議の進行やら、弁当の手配やら――「え、山田さん、欠席なの?(今日のミーティング意味ねえじゃんか…)」「なに、部長って、魚だめなの?(シャケ弁ばかりにしちゃったよ…)」――と、少し妄想しただけでも、いかにも地味だ。その割に実にめんどくさそうだ。加えて、なんというか、とてもクリエイティビティなど発揮できなさそうにも思える。
だからこそ、一般的に、「事務局=損な役回り」とされているわけだ。
しかし、本書は、そんなステレオタイプに「否!」と説く。
そして「事務局が戦略的に動けば、組織を巧みに動かすことができる」と続ける。
ロジックはこうだ。
世の中には地味で大変だから、誰しもやりたくない仕事=「雪かき仕事」がある。
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しかし、「雪かき」は、誰かがやらないとみんなが困る。事故も起きるかも。
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つまり、「雪かき」のような地味な仕事こそが、社会の秩序を保っている。
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会社でも同じ。
議事録書きや、ホワイトボード拭き、弁当の手配などといった「雪かき仕事」=「事務局仕事」を率先してやることが、会社の秩序を保つのだ!
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いわば事務局はビジネスプロデューサー。
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権限や肩書きなどなくとも、事務局力があれば、チームを会社を活性化し、さらにイノベーティブな組織体へと変貌させられるのだ!
著者の野村恭彦氏は、富士ゼロックスのナレッジ・サービス事業(KDI)を立ち上げ、現在もシニアマネージャーを努める人。「イノベーション行動学」という理論に基づき、こうした事務局力の大切さを説きながら、多くの組織を変革してきた。そんな実績に裏打ちされた自信と教養が、独自のユーモアとからまることで、実に心地よく「その気」にさせてくれる。「雪かき仕事がしたい!」と。
短期的な成果を求められる今、派手な仕事ばかり追い求め「オレがオレが」「ホメてホメて」的な利己的な働き方に傾倒する人が目立つことも、“雪かき”の誘因となるようだ。
野村氏は言う。
「なぜなら、地味で目立たない雪かき仕事をやると、逆に『ものすごく目立つ存在になる』からだ。そう、私が伝えたかったのはそこである。雪かき仕事は、本来、誰にもほめられないけれど大切な仕事、という意味であった。でも、そんな仕事を今の組織風土の中で自分からやる人は、絶滅危惧種なみの少なさだ。逆説的なことであるが、ほめられたいなら、雪かき仕事をしたらいい。ただし、黙々と。」
いわば逆張り。いまの時代、「目立たない」こそ、目立つわけだ。
「いやいや。僕なんてダメですよ~」「そんな器じゃないですよ~」「ははは…オレなんて口ばっかのカス野郎ですから」なんていつも自嘲気味に自分を評価。安全な場所に身を置いておきながら、その実、密かに「ほめられたい」し「憧れられたい」「蒼井優ちゃんとデートしたい」とゲスな欲望をひたかくしてきた僕にとっては、ことさら響いた。
つまり、雪かき仕事をすれば、蒼井優ちゃんとつきあえるのだ。(←超訳)
そんなわけで、次回はいよいよ雪かき仕事をはじめてみます。
つづく。