月別アーカイブ: 2010年3月

第3回「なぞり千本!?」グラフィックデザイナー・井上祥邦さん(2)

(竹内三保子/ニューワークタイムズ編集長・カデナクリエイト代表)
「なぞり千本!?」グラフィックデザイナー・井上祥邦さん(1)
「なぞり千本!?」グラフィックデザイナー・井上祥邦さん(2)
「なぞり千本!?」グラフィックデザイナー・井上祥邦さん(3)

出来のヒドさに編集者が泣いた!?

井上さんはDTPオペレーターの技術を身につけたので、次の会社はすぐにみつかった。デザインとDTPを手がける制作会社だ。
井上:最初は手書きのデザインをデータに起こしたり、すでにデザイナーがつくったデザイン・データに文字を流し込んだり、修正したりする作業をしてました。膨大なデザインを見ているうちに、自我に目覚めてしまったんですね。『自分もデザインがやりたい!』って。
――そうはいっても、DTPオペレーターからデザイナーに転向できた方って、実際には少ないですよね。学校に行かれたのですか?
井上:行きたかったんですけど、とにかくお金がなかった(笑)。デザインの本などを買って自分で勉強しました。本を見て、ひたすら真似をして同じデザインをつくってみる。その繰り返しでしたね。
――その会社で、デザインはさせてもらえたのですか?
井上:はい。そこの会社は初歩的なデザインの仕事は沢山あったので、そうした仕事をちょこちょこさせて頂くようになり、少しずつデザインの仕事を覚えていきました。思い出深いのは、某出版社のタレント本を担当したときのことです。出来があまりに悪くて、作品を見た編集担当者の方を泣かせてしまいました。
――え~!? それでどうされたんですか?
井上:制作会社ごと変えたいと言われましたが、『そこを何とか! 最後までやらしてください!』と。もう必死にお願いしました。そうしたら、『もう一度だけなら』と最後はチャンスをいただけました。
――ダメなデザイン、いいデザインって、どこが違うんですか?
井上:基本的にグラフィック・デザインって、コミュニケーションの手段なんですよ。たとえば文字は縦組と横組があって、縦組なら基本的には読みやすいように右上から左下に流れるようにデザインする。つまり本来は、導線や要素のバランスなど考えた上での設計が必要です。ところが、当時の自分は「伝える」という意識が低く、感覚的にデザインしていた。そこを指摘されたわけです。
――修正後の作品はどうでした?
井上:なんとか合格点。打ち上げにも呼んでいただき、いろいろ話もしました。その時、『デザイナーなら、独立することも考えてもっとがんばれ』と言われました。デザイナー扱いされたのは、すごくうれしかったですね。また、この日を境に『独立』を視野に仕事をするようになりました。ですからこの仕事は、いろいろな意味で自分にとっての大きなターニングポイントになったわけです。

なぞり千本! ビシビシしごく鬼社長

その後、井上さんは企画力で有名な編集プロダクションに転職する。本格的にデザインの腕を磨くためだ。
井上:実は、面接の時に一悶着あった。というのは、履歴書を見ながら、社長が自分の大学をバカにしたんですよ。それで、『自分のことをバカにするのはいいけど、大学のことはバカにするな!』って言い返した。それが逆に評価されて採用されました。そういう熱い社長なんですが、仕事はものすごいスパルタだった。
――たとえば?
井上:入社したら、いきなりいろんなデザインのトレースを片っ端からさせるんですよ。なぜ、ここに罫線があるのか、なぜ、文字はこの大きさなのか…。『トレースしながらバランス感覚を体にたたきこめ! とにかく手を動かして覚えろ!』って。3ヶ月くらいは、本来の仕事が終わってから数時間トレースをしてました。毎日トレースをやらされました。今になると、すごく役だったことが分かりますが、その時は『パソコンでデザインする時代に、なんて前近代的なんだ』と思っていました。
――本格的に仕事を任されるようになったのは?
井上:入社して半年過ぎた頃からですね。ところが、いくらデザインしても『ダメ!』『全然駄目!』『何やってんだ!』と怒鳴られる。20代後半で他人に怒鳴られることってないじゃないですか。精神的にもキツかったし、仕事の量的にもキツかった。
――どのくらいの量をこなしていたんですか?
井上:平均1ヶ月に3冊ペース。デザインをしながらDTPオペレーションもこなしていました。最終的には、数字も意識するようになった。利益率が見えるから目標達成するためには数をこなさないといけない。完全に自分のキャパを越えてました。
――それで、どうなったんですか?
井上:体を壊して、会社を辞めざるをえなくなりました。その時は、本当に『オレはだめなんだ』と思いましたよ。28歳か29歳の時かな? もうすべてを諦め、実家に戻ろうと思ったのですが…。父上に電話をすると『もどってくんな!』と怒られた。
仕事も失い、健康も失い、実家にも戻れなくなった。せっかくデザイナーへの道を歩みだしたのに、再び、井上さんはどん底に落ち込んでしまった。(つづく)
「なぞり千本!?」グラフィックデザイナー・井上祥邦さん(3)

今日のヒラリー
5日間で5カ国を回る大忙しの中南米訪問の旅の真っ最中だ。昨日は、震災のチリを訪問して救援を確約してきた。そして、今日は、ブラジルで、イランの核開発問題などを話し合うそうだ。帰国予定は3月5日。

スパイダーマンも失業!?

先月の発表では4ヶ月ぶりに10%を下回り、やや回復の兆しを見せたアメリカの失業率。それでも9.7%というのは、未だ深刻な数字です。だからして、こんな人にまで影響し始めたもよう。以下、CNNのサイトより。

映画化もされている米マーベル・コミック刊行の人気コミック「スパイダーマン」で、スパイダーマンの正体である主人公ピーター・パーカーが、今週発売される最新刊で失業者になることが1日分かった。
パーカーは物語の中で解雇され、市長の専属カメラマンの仕事を失う。パーカーは現実社会の悩みを抱えた等身大の人物設定で知られ、物語にも度々世相が反映されている。
マーベル社によると、パーカーにはカメラマンのほか、理科の教員や科学研究者などの職歴がある。今後は金をやりくりしながら、スパイダーマンのコスチューム修復用の特殊な物質を購入する。2つの顔を持つことは依然秘密にするという。

「金をやりくりしながら…」って、どうするんでしょうか? 『e-Bay』でスパイダーウェブを売ったり? 何にしても「世相が反映されている」作品なので、パーカーが復職した時こそが「アメリカの雇用が復活した時」といえそうです。
[CNN.co.jp]「スパイダーマン」の主人公パーカー、最新刊で失業者に
http://www.cnn.co.jp/showbiz/CNN201003020010.html


働き方が見つかる「東京仕事参観」

求人サイト「東京仕事百貨」を運営するシゴトヒトが、今年2月より、就職・転職活動者などに職場訪問の機会を設ける「東京仕事参観」を始めました。以下シブヤ経済新聞より。

 東京仕事参観は「もっとリアルに自分の仕事をしている人の『背中』を感じる場所も必要なのでは」との思いから始動する新プロジェクト。高校生以上の会員を対象に月3回以上の職場訪問日を設けて、働いている人の話を聞く会員制ワークショップを開催する。訪問場所については、これまで中村さんがかかわってきた中で「働く人たちが、胸を張って『自分の仕事をしているんだ』と言えるような工場・オフィス・飲食店などを、業態にかかわらず訪れたい」という。
 中村さんは「もっと多くの人が『自分の仕事』を実感できる状況にしていきたい。そのために東京仕事百貨や東京仕事参観をより充実させるとともに、新しい働き方を提案するオフィス空間をつくったり、東京仕事百貨の本も出版したりできれば」と意気込む。

職場訪問は、子供の学校の授業などでありますが、大人になるとなかなかチャンスがありません。しかし、自分に合った働き方を探している大人にこそ必要なはず。貴重な体験の場になりそうです。
[シブヤ経済新聞]求人サイト「東京仕事百貨」が職場参観プロジェクト-働く人の「背中」感じて
http://www.shibukei.com/headline/6728/
東京仕事参観
http://shigoto100.com/sankan/


市役所から始めるはじめの一歩

エコ対策とワークライフバランスは、日本経済の大きな課題です。三重県名張市では、市役所が、その先導役を果たそうと新しい取り組みを始めました。以下毎日JPより引用。

名張市は3月から、市職員に原則毎月1週目の1日以上を、公共交通機関や徒歩などでの通勤を求める「エコ通勤ウイーク運動」と、毎週1回、ノー残業デーを設ける「ワークライフバランス及びライトダウンの推進」を始める。市環境対策室は「まずは職員に定着させ、最終的には一般企業など全市的な取り組みにしたい」と話している。
 市は08年から7月7日に、エコ通勤・ノー残業を実施しているが、さらなる二酸化炭素の削減、健康維持などの点から拡大を決めた

ところが、試行期間の報告率は55%。ノー残業デーも、職員数が減っているため、一斉に実施するわけにはいきません。でも、見方によれば、苦労するからこそ、民間企業に還元できるような実践的なノウハウが蓄積できるのではないでしょうか。
[毎日.jp]エコ通勤:名張市、全職員を対象に導入 毎月1週目の1日以上--来月から /三重
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20100227-00000109-mailo-l24


「本当に幸せな働き方」を調査

「本当に幸せな働き方とは何か」――。
日本財団が、今年1月、「本当に幸せな働き方」についての関するアンケート調査(1000人)を行い、先日、調査結果が発表されました。
アンケートの結果、「お金以外の報酬で大事なもの」で最も多かった回答は「仕事自体の面白さや刺激」(54.0%)。
興味深いのは、「あなたが幸福に働くために、今の会社にどうあって欲しいと思いますか」という質問。「社員の仕事とプライベートのバランスについて考える会社」「社員の職場環境に気を配れる会社」がトップかと思われましたが、それぞれ15.3%と15.0%。実際には「仕事をすればするだけ報酬をくれる会社」という回答が37.5%とダントツ1位でした。良い職場環境よりも仕事に見合った報酬が欲しい、という要望が強いようです。
また、「お金以外の報酬で大事なもの」という設問では、「仕事自体の面白さや刺激」(54.0%)が最も多い回答でした。
幸せになれる働き方、あなたの考えはいかがですか?
[日本総研]「本当に幸せな働き方」アンケート結果発表
http://www.nippon-foundation.or.jp/org/press/10022401.html