第8回 真っ青になりました。~取材の時のファッションとは?~

振り返ると、今夏は実に暑かった。
インタビュアーにとって…というよりも「汗だく星人」な私にとって、夏の暑さは実にキツいものです。
なにせ夏場の取材となると、私はオールウェイズ・汗だくだく。
だから、必ずインタビュー相手に言われるのです。
「あ、暑かったら、どうぞジャケット脱いでください」(←はい。と即座に脱ぎます)
「ああ、エアコンちょっと強めますね」(←助かります)
「あれれ、今日、雨ふっていましたっけ?(笑)」(←いじめでは?)
だったら、最初からポロシャツなりでいきゃいいのに、という話もあるのですが、基本的に取材の際は「相手と似た格好をする」というのがセオリーです。
例えば、びしっとしたカタめのビジネスマン相手なら、やはりこちらもスーツにネクタイで伺う。逆にこだわりもったアメカジショップオーナーが相手なら、例えばこちらもチノパンにデニムシャツで、といった具合です。
「スーツならば失礼は無いだろう」と思われる方もいるかもしれませんが、ジーンズにTシャツ姿の相手の前に、ガチガチのダークスーツのインタビュアーが現れたら「なんだか話しづらいな…」となかなか胸襟を開いてもらえないものです。逆に、年配の会社社長の前に穴のあいたジーンズ姿で現れたら、怒られかねません。
ようするに、インタビュアーにとってのファッションは、自分ではなく「相手のためにある」と考えるのが正解。良い記事を作成するためには“気持ちよく相手に話してもらう“ことがなにより大事だからです。ファッションはそのための環境づくりであり、インタビュアー自身のファッション・ポリシーやら好み、はては「暑い・寒い」なんて二の次、三の次になる、というわけです。
その日も、暑い、暑い夏の日でした――。
媒体は独立起業に関する情報誌。
取材相手はネットでショッピング代行を手がけていた個人事業主の方。
カタからず、やわらかすぎず、という職業の相手だったので、守備範囲の広い「ノーネクタイでジャケット着用」というスタイルで、取材先の渋谷のカフェにうかがいました。
「あ……ハンカチ忘れた」
それに気づいたのは、当時住んでいた最寄駅に着く直前でした。これから家まで戻ってハンカチ一枚を取りに行くのは、実に億劫。なので、駅前の100円ショップにてバンダナを購入。これをハンカチとして使うアイデアを採用しました。
「ヴィンテージのアメリカ古着なんかも扱っている人だから、バンダナって感じかな」
中途半端に色気を出したのが、いけなかったのかもしれません。
取材そのもは実にスムーズに進行しました。
「学生時代からずっとファッションが好き」「しかし、地方都市の田舎町ではほしいものが手に入らない」「雑誌でみたあのブランドがほしいから上京していた」「出費と時間が実に無駄」「ならば『かつての自分』を相手にビジネスを!」「そして思いついたのが、ブランド品のショッピング代行だった」。
スムーズじゃなかったのは、取材場所となったカフェの空調。35度近い猛暑のせいか、極めて効きが悪く、取材序盤から私の額や脇は汗ダクダクに。あっというまに汗だく星人になっていたのでした。もっとも――。
『100円でバンダナ買っておいてよかった』
密かにそう思いながら、噴き出る汗をぬぐいつつ、ふんふんと取材はつづいていました。
が、そのとき突然、取材相手の表情が一変。
そして、こんな一言を私に放ちました。
「あの……顔、青いですよ」
え? そんなまた。えらく暑いとはいえ、顔面蒼白になるほど体調悪くないですよ~、なんて笑って返したのですが、「そうじゃなくて」と返されつつ、同行していたその方のスタッフに小さな手鏡を渡されました。
そして、驚きました。
『白昼、渋谷のカフェにブルーマン(http://blueman.jp/dir/about/index.html)あらわる!』
いや。あそこまで青くないのですが、何か青鉛筆で雑に塗りまくったかのように顔全体がうすら青く。理由はもちろん、青いバンダナ。噴き出る汗を拭うたび、未洗濯のバンダナから染料が、私の顔にいちいち塗布されていった、というわけです。結果、不健康というか不気味というか、まるで不可思議な青いいきものが誕生。”汗だく”を退けようとした結果、「星人」だけが残ってしまった、というわけです。
以来、私のジャケットのポケットにも必ずハンカチが入っています。
さらに取材バッグには、必ず予備ハンカチと予備予備のタオルハンカチまで常備する気合の入れようです。
もちろん、色は青以外で。
■今回の失格言
バンダナを買ったら、必ず洗濯してから使うべし。


カテゴリー: インタビュアー失格 | 投稿日: | 投稿者:
hakoda

hakoda について

1972年新潟県生まれ。『月刊BIG tomorrow』『Discover Japan』『週刊東洋経済』等で、働き方、経営、ライフスタイル等に関する記事を寄稿。著書に『図解&事例で学ぶイノベーションの教科書』『クイズ商売脳の鍛え方』(共著)、『カジュアル起業』(単著)などがある。好物は柿ピー。『New Work Times』編集長心得。