インタビューを成功させるための鉄則は、事前に取材相手のことをよく調べておくこと。
著書、新聞・雑誌・ネットの記事、出演番組…。これらをチェックし、これまでの経歴や人となり、考え方などの予備知識を得ておくのと、得ていないのでは、インタビューの結果は大違いです。メリットをいくつか挙げると、
・何度も出ている話をせずに済むので、時間の節約になり、重要な質問に時間を割ける
・「あの記事ではこう書かれていましたが、実際この時どうお考えだったのでしょうか?」とより突っ込んだ質問ができ、それがハマれば、他誌にはない情報を引き出せる
・趣味やプライベートな話で盛り上がることで、会話のキャッチボールがしやすくなる
といったところでしょうか。
逆に、下調べが甘いと、表面的な質問に終始してしまい、薄っぺらい記事しか書けなくなる。また、それが相手にバレると、取材の雰囲気がものすごく悪くなることもあります。
というわけで、ライターになった頃から、最低限の下調べはしているのですが、
「下調べすればいいわけじゃない」ということを思い知らされた出来事がありました。
それは10年前。某月刊誌の「私の創業ヒストリー」といった記事の取材でした。
取材先は、ITベンチャーの旗手として、世間でも注目を浴びていたキレ者社長。
一方の僕はというと25歳(当時)。それまでビッグネームに取材をした経験がないペーペーで、しかも当日は編集者が同行しないことに。
「僕一人で大丈夫だろうか…」
ガチガチに緊張してきました。
その不安を少しでもぬぐい去ろうと、雑誌やネットのインタビュー記事を手当たり次第にかき集めました。そして前日から読み込み、プロフィールや考え方を暗記するほどに。よし、これだけ覚えれば、「そんなことも知らないの?」とは言われまい。きっと大丈夫――。
さて、取材が始まりました。下準備の成果を発揮するぞ!
僕「まず、開業のきっかけからなんですが、意識された時期は、やはり大学時代にソフトウェア会社で働かれていた時ですか?」
社長「そう…ですね、はい」
僕「そちらで仕事をされている時に、今後就職するというよりも、これからインターネット系のビジネスをしていこうと思ったわけですね」
社長「そう…ですね」
僕「で、○○に書かれていたのですが、ご友人と3人で起業されたそうですが、大学で価値観の合うご友人と知り合ったそうですね」
社長「……ええ」
文字にすると、何がいけなかったのか、よく分かります。
一言でいえば、「下調べの確認作業に終始していること」。
確かに質問なのですが、答えも僕がしゃべってしまっているわけですね。
これでは、相手は「YES」か「NO」でしか答えられません。
営業でも合コンでも、会話を盛り上げる基本は「相手に話してもらうこと」。
「YES・NOでしか答えられない質問」は、その対極といえるでしょう。
インタビュアーがそれをやってどうする!
もちろん、この取材は失敗に終わりました。
「確認作業」ばかりしていたので、話が盛り上がらず、そのまま取材時間が終了。
とりたてて面白い話を引き出せず、原稿も薄っぺらい内容になってしまいました…。
この「確認作業」をいつ反省したのかは忘れたのですが、
今では、インタビューの冒頭で、どの著書とインタビュー記事を読んだかを伝えると共に、「改めて教えていただいてもよろしいですか?」と言うようにしています。
そして、「まず、○○さんの営業の基本スタンスを教えてもらえますか?」などとYES・NOでは答えられない質問をしています。
こうすると、相手が「ここまでは知っているだろう」と判断し、回答をこちらに合った形にアレンジしてくれる。また、相手も話しやすいことが分かったからです。
今回の失格言
知ってても 話さないのが 心意気