第3回 忘れ物、しちゃいました。

ライター三種の神器といえば、「メモ帳」、「ペン」と「ICレコーダー」の3つ。「ICレコーダーがあればメモはいらないのでは?」なんて意見もあるかもしれません。ですがレコーダーがあっても、取材中のメモはかなり重要です。まず、話を聞きながらメモを取っておかないと、取材中に「この話は聞いた」とか「ここの情報が足りない」という情報の整理ができなくなります。加えて、万が一ICレコーダーで録音できていなかった場合、手書きのメモだけが取材の命綱になります。
それと、メモには記録以外の重要な役割があります。メモをきちんと取ることが、取材相手に「私はあなたの話をちゃんと聞いていますよ」というアピールになるわけです。これがまったくバカにできなくて、相手に「この人、ちゃんと話を聞いているんだろうか?」と疑われてしまっては、聞ける話も聞けなくなります。つまり、インタビュー時のメモは取材相手に対する礼儀でもあるのです。
……と、こんな偉そうなことを書いておいてなんですが、私はメモに欠かせないペンとノートを持ち忘れる悪いクセがあります。取材直前にコンビニでノートを買ったことは2度や3度ではありません。つい先日も取材に愛用のボールペンを持ち忘れてしまい、大変な目にあいました。
それは某月刊誌の仕事で、ファイナンシャルプランナーの先生にデフレ問題について伺う、やや堅めの取材でした。応接室に入り、カバンから使い慣れたICレコーダーを机に出し、ノートを出し、愛用のペンを……ない! いつもはカバン内のペン入れスペースに収まっている黒のボールペンがどこを探してもないのです。いや待て、何かほかに書くものが入っていたはずだ、とガサゴソとカバンの中を探すと、あ、あったぞ! 「オレンジ色の蛍光マーカー」が! ……け、蛍光マーカー!?
それでも何もないよりはマシかと気を取り直し、取材に臨みました。もちろん、私が蛍光ペンでメモを取っていることがバレないよう、ノートを立てて手元を隠して。ところが、ノートを立てすぎたのがよくなかったのか、マーカーが水平になってインクが非常に出づらい。ただでさえ蛍光で色が薄いのにもっと字の色が薄くなってしまって、自分でも何を書いているのかさっぱりわからなくなってしまう始末。
とはいえ、相手に話を聞いていることをアピールするために、手を休めることもできない。いつの間にかノートは薄オレンジ色の読めない文字でいっぱいに。心なしかカメラマンも後ろから私の手元をチラチラ見ているような気がして非常に恥ずかしかったのを覚えています。当然と言うべきか、気が散ってあまり良い取材ができませんでした。まさに「インタビュアー失格」。今思い出しても非常に苦い経験で、蛍光マーカーを見る度にチクチクと心が痛みます。
というわけで、今回の「失格言」はこちら。
筆記具は常に多めに持ち歩け!(蛍光マーカー以外)


カテゴリー: インタビュアー失格 | 投稿日: | 投稿者:
sugai

sugai について

1982年山形県南陽市生まれ。『BIGtomorrow』『PCfan』『週刊 東洋経済』などに記事を寄稿。所属する株式会社カデナクリエイトではIT担当として、TwitterのレクチャーからWordPressでのブログ構築まで手広くこなす。