前回、下調べについて触れましたが、さらに補足すると、インタビューの時、取材相手が本を書いている場合は、事前に読むだけでなく、取材中、机の上に置くようにしています。
そうすれば、取材相手に「予備知識がある」「コンテクストは共有されている」ことが伝わるので、話がスムーズに進むし、著書の内容よりも突っ込んだ話をしてもらいやすくなります。
また、「本を買った」という事実が心の距離を縮める効果も見逃せません。
これは僕に限らず、同行する編集者の大半が実行しているので、業界の常識なのでしょう。
さて、本を机の上に置くこと自体は良いと思うのですが、
余計なことをしたせいで、取材の雰囲気が気まずくなったことがありました。
某誌の投資関係の記事で、ある評論家の先生を取材したときのことです。
この取材は、下調べの時点から、イヤなムードがたちこめていました。
「必勝の買い方」について書かれた著書を読んだのですが、何が何だかさっぱり分からない。
「僕の知識不足か?」と思ったのですが、担当編集者も「分かりませんね」。
結局、内容が薄く、肝心なことが書かれていないのです。
「この取材、期待できそうにないですね…」などと話していました。
で、当日。
当然ながら、本人に対しては、疑いのまなざしなど向けられません。
機嫌を損ねたら、聞けるものも聞けなくなります。
ご本人も、「この本、初心者向けに、けっこう分かりやすく書いたんだよね~」。
「ですよね~」というスタンスで、話を伺っていました。
ところが、取材途中に、予期せぬ出来事が。
「その話は、ココを見てもらうと分かるんだよな」と言うや否や、
先生が、私が机の上に置いた著書を手に取ったのです。
「あっ!」と思ったときには、もう遅かった。
普段、僕は本を読みながら、大事なところにアンダーラインを引いたり、感想を書き込んだりするタイプなのですが、この時は、内容の薄さに腹が立ち、ついついネガティブな感想を書きまくっていたのです。
たとえば、唐突に出てきた専門用語に対し、「は!?」と書いたり、
分かりやすくまとめた(とおぼしき)部分に「うーん…」「意味わからず」と書いたり…。
言い訳すると、机の上に載せるその他のものには、取材相手を不快にしない気配りをしていました。
たとえば、質問項目を印刷した紙やノートに、相手を否定するような書き込みはしませんし、相手の名前を書くときは必ず「様」「さん」をつけます。また、ICレコーダーの電池が途中で切れないよう、なるべく早めに変えています。
しかし、詰めが甘かった。
書き込みを見た時、先生の表情はとくに変わらず、思い過ごしかな? と思えたのですが、後日、この先生と、原稿確認の段階でちょっとモメました。
仕返しとばかりに、「これでは意味不明です」「何も分かっていませんね」。
…今後は、本の書き込みにも注意しなければ。
でも、書き込まないと、内容が頭に入っていかないのも事実。
正直、解決策が思い浮かんでいません。2冊買い? うーむ…避けたいところです。
今回の失格言
そもそも そんな人に アポとるな