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takeuchi について

東京生まれ。西武百貨店勤務を経て株式会社カデナクリエイト設立。雑誌、社内報、単行本、webなど媒体問わず執筆。興味の中心は人事制度や社内教育だったが、最近は、インターンシップ、塾、学校など『教育』全般に広がっている。苦手は整理整頓。

第1回 プロローグ シゴトをたどりたくなったワケ

仕事先の仕事先の仕事先…。

「パーティーで出会った人でも、ナンパ相手でも、
お互い3人の知人をたどれば、必ず、共通の知り合いがいる」
計算上はそうなるそうだ。いいかえれば、3人たどれば、日本人全員がつながることになる。
それなら、仕事先の仕事先を延々たどってみたら、どうなるのだろうか? 計算上は全ての社会人がつながるはずだ。宇宙飛行士やイルカの調教師やスゴイ科学者など、思わぬ仕事にたどりつくかもしれない。
中には、外国人とつながっている人も沢山いるはずだ。ハリウッド・スターやシリコンバレーのベンチャー起業家…。もしかしたら、あのヒラリーにまでたどりつくのも夢ではないかもしれない。想像しただけで、なんだか自分の仕事がグローバルに思えてきた。
そんなわけで、仕事版テレフォンショッキング『ヒラリーに会いたい』をスタートさせることになったのだが、実は、この企画にたどりつくまでには、数年間の紆余曲折があった。

複雑化する仕事

そもそも仕事をたどろうと考えたきっかけは、弊社のアルバイト学生で、「将来、何をやりたいのかよく分からない」と答える人が増えてきたことだ。分からない理由の典型は、「仕事を具体的にイメージできない」ことだった。
いずれの学生も、何がやりたいのか真剣に悩み、自分探しにはまりこんだり、何万円も出して性格診断を受講したりしていた。何で、もっと単純に考えられないのか、最初は不思議に思ったが、冷静に考えてみれば、悩むのは当たり前かもしれない。
まず、自分の頃は、理系と文系、男性・女性の区分けはあったけど、職種別採用をしている会社はほとんど無かった。普通の人は、職種など考えずに会社だけを選んでればよかった。また、当時は、上場企業の数は少ない上に大量採用をしていたし、業種も単純だった。
それに比べて、今は職種別採用をする会社が増えてきた。上場企業は山のように増え、外資系企業もたくさん加わったし、上場をターゲットにした優良な中堅企業も増えてきた。また、サービス化の進展とともに、業種はどんどん細分化された。事務、IT、医療、クリエイターなどに細かく分かれている人材派遣業などは、その典型だろう。これでは、たとえ社会人経験があっても職種選びや会社選びは難しいかもしれない。実際、転職活動で何がやりたいのか分からなくなる人も少なくない。

仕事マップへの挑戦

何かいい方法はないものか…。学生の悩みが伝染したように、仕事のことが気になりだした。そんな時に、ふと手にとってみたのが、2003年に発売されて大ヒットした『13歳のハローワーク』。「おしゃれが好き」「スポーツをするのが好き」「人の役にたつのが好き」といった「好き」なことから関連する職業を選ぶという手法で、様々な職業が紹介されていた。
職業選びの段階では、就職用の業種別、業界別の解説書よりもはるかに分かりやすい。実際に、何人かの大学生に見せると、「こんな職業があったんだ」と志望先選びに役だっている様子だった。しかし、いかんせん子供向け。「こんな職業がある」レベルまでしか分からない。大学生が、この仕事で、こんな人たちと関わり合いながら働くと具体的にイメージできる方法はないものか?
そこで、みつけたのが、岩波書店から出ていた輪切り図鑑『クロスセクション』だ。潜水艦や地下鉄の駅やジャンボジェットなどを輪切りにして、内部の様子とそこで働く人々が描かれていた。子供向けの絵本だが、これがめっぽう分かりやすい。
この手法で、東京ドームやコンビニなどを輪切りにして、そこで働く人、さらに商品の仕入先や、メンテナンスに関わる業者などを紹介すれば、仕事の関わりが分かりやすいかもしれない。こんな就職先選びの本が出たら、大ヒット間違いなし! いつのまにやら、自分の仕事につなげようと目的はすり替わり、いそいそと企画書を書いて、いくつかの出版社にもっていった。ところが…。
「どうやって表現するの?」
「イラスト代がとんでもなくかかりそうな…」
「とてつもなく巨大な本になってしまうのでは?」
「いまいちピンと来ない」
どうも評判がよろしくない。
「すでに、似たようなアイデアの本が出てました!」
取材から戻ってきたスタッフの一人が、いろいろな職業をつないだ地図をもってきた。それは、当時、民間人出身の有名校長として一世を風靡した藤原和博さんの『「ビミョーな未来」をどう生きるか』という本の1ページだった。細かくて、ちょっと見づらいけど、確かに自分がやりたかったことだ。
「その地図を拡大したものが教室の廊下に貼ってありましたよ。分かりやすかったなぁ!」
あ~~あ。やられちゃった! モチベーションは急降下。そのうち、様々な体験談がついた分かりやすい業界案内本もちらほら出てきた。
いつのまにか、仕事のつながりのことなどすっかりと忘れていたが、先日、たまたま「笑っていいとも!」のテレフォン・ショッキングを見た時に、ピ~ンと閃いた。もしかしたら、複雑な図など作らず、単純に、仕事をたどればいいのでは? いろんな職業の人に直接、お会いした方が自分だって楽しい。自分の憧れの人へつながるという目的があった方が、もっと楽しい。そんなことで、『ヒラリーに会いたい』プロジェクト始動! 
はじめの一歩は、仕事の内容が分かるようで分からない、お取引先のデザイナーさんからだ。